BDコラム#001「宇宙へのアクセスの敷居を下げ、宇宙をもっと身近なものにする」Space BDエンジニアテラダの挑戦

「衛星打上げの一貫型サービスの提供」を目指すSpace BDのサービス内容をもっと知っていただきたい!という想いから、当社エンジニアのインタビューコラムを始めました。第1弾は、エンジニアリング部マネージャーのテラダです。インタビュアーに広報担当のハラとマーケティング部のリが加わり、Space BDの現場の様子をお伝えしていきます。

Interviewee テラダ(寺田卓馬 )/ ローンチサービス事業本部エンジニアリング部マネージャー

大学卒業後、超小型衛星のユーザーインテグレーション業務やISS補給船の打上げ・運用に関する国内外との技術調整を経験。宇宙利用の裾野を拡大したいという思いから、2019年7月よりSpace BD株式会社に入社。エンジニアとしてJ-SSOD事業/i-SEEP事業/H3相乗り打上事業の立ち上げおよびユーザーインテグレーション業務を担当。

 

Interviewer & Writer ハラ(原 万琳) / コーポレート本部広報

理系学問から避ける人生から、どうしても興味を抑えきれない宇宙の仕事に飛び込む。2019年よりSpace BDに参画し、広報を担当。

 

Interviewer リ(李 美亜) / ローンチサービス事業本部マーケティング部

2016年、ワシントン大学航空宇宙工学部卒業。前職にて、主に大手自動車OEM、電気メーカーのアカウントマネージャーとして、テストオートメーションを基軸とした開発戦略の提案から運用までを支援。2020年3月より海外営業担当としてSpace BDに参画。

 

入社1週間目からフル稼働、海外のお客さまとの記念すべきミッションを担当。

ーまずは仕事内容のご紹介をお願いします!

「宇宙」をキーワードにあらゆる事業を展開するSpace BDですが、私は主に衛星打上げサービスにおいて、お客さまである衛星開発者様のペイロード(衛星や実験装置)を宇宙空間に打上げるための申請手続きや安全審査を支援する業務を担当しています。

専門的な言葉では「ユーザーインテグレーション」といったりしますが、技術的な適合性を確認していく作業に加えて、JAXAさん等で実施される安全審査に向けた準備、打上げ手段の確保やスケジュール調整、宇宙活動法等の各種官辺手続き等、ペイロードを打上げる前に踏む必要がある多くの手続きを、当社では全て一貫型で支援しています。特に国際宇宙ステーション(ISS)へ物を運ぶ際には、宇宙飛行士の方々に危害を与えるリスクが無いか等も厳しく審査していく必要があり、安全審査を通していくには専門的な知識と経験が必要になります。それらを、お客さまの負荷にならないように、また安全審査をスムーズに通せるように支援をすることが私の仕事です。

具体的な案件を挙げますと、私がSpace BDに入社して最初に担当したのが、スペインのSATLANTIS社をお客さまとする案件です。SATLANIS社は「iSIM」という地球観測用の小型衛星に搭載する光学カメラを開発するベンチャー企業です。ISS「きぼう」日本実験棟の船外に装着されている「i-SEEP[1]」という装置を使って実施する、同社初の製品の宇宙空間での実証実験になります。(2020年5月打上げ予定)。

私が入社した時は、すでに技術的な調整が本格化している段階で、引継ぎ後すぐにJAXAの筑波宇宙センターにてペイロードの地上モデル試験に立ち会いました。ペイロードを宇宙に運ぶ為の安全性をしっかりと審査いただきました。

なお、このiSIMの案件は、同社の製品第1号であると同時に、日本の宇宙資産であるi-SEEPが初めて海外のユーザーにて利用されるという意味でも第1号案件でもあり、色々な意味で記念すべき案件となりました。


ハラ:寺田さんは前職から宇宙関係のお仕事をされていましたよね。

テラ:そうなんです。筑波宇宙センターに勤務していたのですが、転職後1週間でまた訪れることになるとは思いませんでした(笑)”


 最も重要なのは、お客さまに衛星開発に没頭していただくこと。

ー「技術調整」という言葉をよく使いますが、実際にはどういった仕事なのでしょうか?

我々のパートナーであるお客さまももちろん技術者なので、ペイロードの開発に関する知見はたくさんあります。例えばSATLANTIS社も衛星搭載用の機器を作っていますし、これまでも宇宙に関する仕事をしてきた方々が集まっています。ただし、ISSは有人施設なので、当然ながら人命が最優先であり、無人のロケットで衛星を打ち上げる時と違う観点での安全基準が求められます。加えて、安全基準を満たす設計というのは必ずしもミッション成功のための設計と同じベクトルでは無いため、双方のバランスを取る必要があり、ここに苦心される方が多い印象です。

1つ簡単な例でいうと、ISSから放出される衛星は太陽光パネルが羽のようについていて、宇宙空間に放たれるまで、その羽はきれいに折りたたまれています。宇宙空間に放出されたあと、適切なタイミングで電流を流すと、パっと開くような仕組みが設計されているのですが、それを制御するための部品について議論することがあります。

安全面を考慮するならば、誤作動が起きて想定外のタイミングで太陽光パネルが展開しないように、制御する機能を二重三重に設けることが有効的です。一方で、1回ではなく2~3回の制御解除を経た後に太陽光パネルが稼働することになるため、ミッション成功という観点ではリスクが多少なりとも高くなり、無事に展開するのを見届けるのは衛星開発の方々にとっては緊張の瞬間です。

技術調整においては、もちろん安全性の確保が第一優先のなか、過去の事例などから要求の本質を解釈して、お客さまとJAXA双方が納得のいく着地点を見つけていきます。これには、ISSの運用に関する仕組みや、衛星の構造などの、幅広い知識と、双方の着地点を見つけていく調整力、双方の前向きな最終判断を仰いでいくためのプロジェクトマネジメントの力、そして何より、実際に打上げプロジェクトを一貫してやりきった「経験」が大切であると実感しています。

目指しているのは、宇宙にモノを運ぶ専門家である私たちの知見を、衛星の設計初期段階から活かし、打上げまでのプロセスをスムーズにすることで、お客さまには自らのペイロードの開発に没頭していただくことです。

エンジニアの寺田 卓馬


“ハラ:技術調整って弁護士みたいな仕事なんですね。

テラ:弁護士といってしまうと、論争のようなイメージが湧いてしまいませんか?(笑) 確かに、過去の事例に関する知識や技術的な専門スキルが求められている点は似ていますね。ただ、お客さま側もJAXA側も「宇宙を目指す」気持ちは同じです。双方の立場を理解してバランスをとりながら、円滑にプロジェクトを牽引していくという、プロジェクトマネジメントの能力が問われると言えると思います。

リ:技術調整を担当するエンジニアに求められる力は「技術力」にはあわせて、要求の背景に関する理解力、調整力、交渉力が必要なのですね。”