衛星開発

人工衛星開発入門「人工衛星とは?」Vol.1

一口に人工衛星といっても、ISSからはやぶさ、10cm立方のCubeSatに至るまで様々な種類があります。
ここでは大きく3つの切り口で衛星を分類します。なお、本記事ではNASAやJAXAによる分類などに準拠して執筆していますが、人工衛星の分類は明確に定められておらず、ここでの定義はあくまで目安です。

  1. 大きさや質量、U(ユニット)と呼ばれる単位の違いによる分類
  2. 衛星を運用する目的の違いによる分類
  3. 打ち上げられた衛星が周回する“高度”と“軌道”の違いによる分類

1. サイズ、質量

人工衛星はミッションによってサイズや質量が異なります。それぞれのサイズ・質量ごとの分類と用途、特徴をまとめると以下のようになります。

サイズ 重量 用途・特徴
大型 1000kg以上 多目的で高性能ミッション機器を搭載する衛星
中型 500~1000kg 高出力で比較的大きな電力を消費する衛星
小型 50~500kg 特定のミッションに特化した衛星
超小型 1~50kg 高性能ではないが実証や教育を目的とした衛星

参考: 宮崎康行(2011)『人工衛星をつくる-設計から打ち上げまで-』

質量によって大きくサイズが分類され、それぞれのサイズにおいて特徴と用途が異なっています。国家主導の衛星開発では、小型から大型にかけてのある程度の大きさを持った衛星が主に開発の対象となっていました。

一方で、近年の民間企業や大学による衛星開発の対象は、超小型という非常に小さなサイズのものになっています。超小型衛星は、次の表のようにさらに細かく分類されます。
MicroSat、NanoSat、PicoSat、FemtoSatの4つの分類に加え、頻繁に使用されるCubeSat、CanSatの2つの分類を整理すると以下のようになります。

名称 質量
MicroSat 10~100kg
NanoSat 1~10kg
PicoSat 0.01~1kg
CubeSat 約1~20kg
CanSat 約0.1~5kg
femtoSat 0.001~0.01kg

参考: NASA “What are SmallSats and CubeSats?”
https://www.nasa.gov/content/what-are-smallsats-and-cubesats

上の表の通り、超小型衛星の質量の分類には大きく4つあります。

最も大きい質量を有するMicroSatの重量区分には、一部の小型衛星を含みます。
次に大きい質量を持つNanoSatには、超小型衛星の多くが分類されます。近年開発が盛んなCubeSatやCanSatなどの衛星のほとんどがこれに属します。
PicoSatについては、一部の軽量のCanSatがこれに属しますが、その数は未だ少ないです。
最軽量のFemtoSatは、ISSの船内で3Dプリントして製造されるような非常に小さい衛星が例としてあげられます。現段階ではかなり特殊な衛星、と考えていいでしょう。

– CubeSat

超小型衛星によく使われる単位に「U(ユニット)」というものがあります。この単位はCubeSatと呼ばれる超小型衛星の大きさを示す単位で、1999年に行われたシンポジウムでスタンフォード大学のTwiggs教授が提案した「10cm立方で1kg」を基準としています。2003年には、東京大学と東京工業大学が共同で開発した1UのCubeSat「XI-IV」が世界で初めて打ち上げられました。

1Uは10cm*10cm*10cmの立方体、2Uであれば20cm*10cm*10cmの直方体の衛星を指します。重量には厳格な規定がなく、衛星が放出される放出機構に依拠します。CubeSatの一般的なサイズには、1U、1.5U、2U、3U、6U、12Uなどがあります。

ちなみに、CubeSatとCanSatはその形状からそれぞれの名称がつけられています。
CubeSatは1辺が10cmの立方体を基準(1U)とした直方体の衛星です。
一方でCanSatはジュース缶の形状である円柱の形状をした衛星で、350mlのジュース缶のサイズのものから、オープンクラスという大きなモデルも存在します。