衛星開発

Space BDとSATLANTIS社、初の小型衛星搭載用カメラの打上げを目指す(Satsearch社ブログ日本語版)

※本記事はSatsearch社より承諾を受け、同社のブログを和訳したものになります。原文はこちら

スペインSATLANTIS MICROSAT社のペイロード、小型衛星搭載用地球観測カメラ(iSIM)が2020年5月21日に種子島宇宙センターからHTV-9にて、Space BDの輸送品として国際宇宙ステーション(ISS)へと運ばれました。iSIMはISSへ向けて打ち上げられた後、2020年夏より日本実験棟「きぼう」の曝露部実験設備「i-SEEP」に搭載され、軌道上で技術実証を行い、フライトヘリテージと技術成熟レベル(TRL)9を取得することを目的としています。

本記事ではSATLANTISと東京ベースのスタートアップ企業Space BDが共同で行うISS「きぼう」船外曝露プラットフォームでの軌道上実証サービスを利用したiSIMミッションを特集し、軌道上実証フェーズにおけるISS船外の活用の可能性について紹介します。

Kibo – the Japanese Experiment Module (JEM) on the International Space Station (ISS)
出典:Satsearch

SATLANTISとiSIMのミッションについて

SATLANTISは2013年にフロリダで設立され、その後2014年にスペインのビルバオを本社に事業を展開しています。SATLANTISは天文物理学、航空宇宙工学、ビジネスといった専門性を持ちあわせ、小型衛星向けの高解像の地球観測用カメラを開発しています。

iSIMの中核となるのは高解像度・イノベーティブ・経済的な小型衛星とキューブサット向けのカメラです。このデザインは、最先端のテクノロジーを利用してクラス最高のパフォーマンスを組み合わせ、開発時間を大幅に削減し、次のレベルの手頃な価格を実現します。このアプローチは、産業界や政府へこれまでにない高解像度のデータの取得とアクセスする機能を提供します。

iSIMの写真。iSIMは初めてi-SEEPに搭載される日本国外の技術です。


I-SEEPの利活用について

i-SEEPは、ISSの安全で安定した機能を活かした非常に簡易で効率的な軌道上実証(IOD)プラットフォームです。ユーザーはISSの電源・電波等が活用することが可能で、バス部の準備や周波数申請等なしで実験を開始することができます。

i-SEEP 利活用の可能性は様々です。これまでJAXAでは、材料曝露ミッションなど、宇宙放射線などの過酷な宇宙環境にさらすことで、より体制の強い優れた特性を持つ新しい素材の実験などがされてきました。

今回SATLANTISは、ペイロードの機能とパフォーマンスの実証実験にi-SEEPを利用します。カメラを地球に向けて観測できるように配置し、所定の間隔で画像を撮っていきます。収集されたデータは船内で処理され、ISSの通信回線を通じてダウンロードされる。

i-SEEPは今回のiSIMのような技術実証(フライトヘリテージ獲得やTRL向上)の他、地球観測や天文学をはじめとする深宇宙の観察、宇宙に関連するフィギュアやアクセサリー、または、広告等の用途で使われることが期待できます。

SATLANTIS社 Senior Space Engineer Stuart Davis氏コメント:

JAXAの iSEEPという実績のあるテクノロジーをSATLANTIS iSIMの実証プラットフォームとして利用できたことで、ペイロードの開発のみに集中でき、従来の軌道上実証ミッションと比較して、コストと時間の大幅な削減に成功しました。

 

JAXAの商業化イニシアティブについて

JAXAは特に地球低軌道の商業化を促進するため、2018年より民間企業に事業を委託してきました。Space BDは、i-SEEP 商業利用、ISSからの超小型衛星放出及びH3の超小型衛星の相乗り事業者としてJAXAにより選定されています。

これまでSpace BDはこれらの分野で合計25の役務契約を締結しており、顧客のペイロード打上の一貫型サポートを提供しています。

JAXAの実績と信頼のある資産を活用することは、人々へより手軽な宇宙へのアクセスを提供することができるようになります。例えば、HTVを搭載したHII-Bロケットの成功率は100%です(三菱重工株式会社のデータ参照)。加えて、ISSへの打上げの際は、クッションで梱包されるなどペイロードに優しい打上げ環境が整っています。

Space BD ローンチサービス事業本部 副本部長 金澤誠氏コメント:

Space BDは、日本の既存の宇宙アセットサービスをグローバル市場に展開することをミッションのひとつに掲げています。専門性を持ったエンジニアが、技術調整のプロセスにおいて実践的なアプローチで、安全評価レビューのサポートなど、宇宙へのアクセスをより身近にしていきます。

 

5月21日の種子島からの打上げに搭載されるiSIMはi-SEEPの国際化と商業利用を象徴する記念すべきものになります。これからさらに多くのプレイヤーがISSを利活用していくことを期待しています。